研究の概要について

 「労働安全衛生法に基づく定期健康診断」については、「有所見の基準」、「特定業務従事者健診の対象業務」、「既往歴の聴取」等について、様々な課題が存在している。それらのあり方について、あり方を検討することを目的とした3年間の研究の最終年度として、以下の結果を得た。
 「所見のある者」および「医師の指示」に相当する値についてデルファイ法によるコンセンサス調査を実施した結果、GPT(AST)を除き、コンセンサス値が得られた。次に、全国労働衛生機関連合会を通じて得られた定期健康診断データを用いて、有所見率、医師の指示率等の値を求めた。その結果、高脂血症、高血糖、高血圧、貧血に関する検査の有所見率は高くなっており、我が国における有病率の高い疾患が健康管理対象としてスクリーニングされる基準が示されていると考えられた。
 「特定業務従事者健診の対象業務」について、統括マネジメント研究会の参加した統括産業医を対象にインタビュー調査を実施したところ、特定業務従事者健診の実施対象となる数値基準は深夜業以外ではほとんど利用されていなかった。また、現在の特定業務従事者健診の対象業務は、深夜業など身体負荷の高い業務と、有害物取扱い業務に大きく分類し、前者の業務は、これまでと同様の健康診断を実施し、後者は特殊健康診断のみ実施した方がよいとの意見が多かった。3年間の研究結果をもとに3項目から成る項目案を作成し、日本産業衛生学会の産業医部会に所属する医師を対象にアンケート調査を実施した。その結果、それらの項目案が多くの産業医に支持された。
 前年までの研究結果をもとに「既往歴の情報収集取り扱い規程作成ガイド」案を作成した。作成した案を提示し、機縁法によって集めた医師から①修正すべき箇所、②追加すべき箇所について意見を収集し、その内容を参考にガイドを完成させた。ガイドでは、既往歴という機微な個人情報を収集するという観点で、不必要な健康情報を収集せず、収集した情報も適切に取り扱う必要があることを基本とし、不必要な健康健康情報を整理した。