テレワークとなった働く人

テレワークとなった人の健康影響には、以下のようなものがあがりました。

生活習慣

身体活動量の低下が懸念されます優先労働者の声

・都市部では在宅勤務にともない通勤がなくなります。公共交通機関による通勤では、徒歩の時間も多いため、在宅勤務になることで活動量が低下します。また、自転車やランニングで通勤していた人は、その分の活動量が低下します。”Stay home”により外での運動も控えることから運動量の低下が懸念されます。適度な運動はこころの状態にも良い影響を与えます。

対策

・自宅にいながらも運動することの重要性について啓発しましょう。

ネット上で自宅でもできる運動の情報が豊富にあります。
(例:札幌市スポーツ協会:運動不足解消 自宅でできる運動

・朝や夕方にテレビ会議をする際、みんなでラジオ体操をしている企業もあります。

・3密(密閉、密集、密接)をさけて運動するように啓発します。外で運動する場合はなるべく距離をあけるよう推奨されています(スポーツ庁)。海外の一部の研究に、ジョギングは約10m、ウォーキングは約5mあけることを推奨しているものがあります。

1人暮らしの人など孤立感が予想されます優先労働者の声

・リモートワークの普及、外出自粛により、地域社会との関わりが低下することで人とのつながりを感じられず、孤独感や不安感の増大が懸念されます。

対策

・電話やメールのみならず、オンラインでのミーティングや昼食会などを開催し、人とコミュニケーションの取れる機会づくりを啓発しましょう。

・コロナウイルス感染症の影響による心の悩みについて、チャット形式で相談する窓口も多く設置されています。

生活習慣の変化(食生活、飲酒、喫煙など)が予想されます労働者の声

・”Stay home” により自宅での生活が基本となり、生活習慣の変化が予想されます。まず、テレワークになることで好きな時間に好きなものが食べられる環境のため、間食が増加したり、昼食に社員食堂を利用していた人が自宅で昼食を摂るようになったりと、ほとんどの人の食生活が変化すると予想されます。次に、飲酒量の変化が予想されます。懇親会の開催が制限されるために飲酒量が減る人もいれば、外出できないなど様々なストレスにより飲酒量が増える人も予想されます。同様に、喫煙本数の変化も予想されます。テレワークになり、周囲の人に連れ立たれて喫煙することがなくなって喫煙本数が減る人もいれば、自分の好きな時間に喫煙ができるようになり喫煙本数が増える人も予想されます。

対策

・コロナウイルスに対抗する免疫力を維持するために、惣菜やインスタント食品のみではなく、バランスのとれた食事を意識するよう啓発しましょう。

・飲酒をする際は、飲酒前に「時間」と「量」を決めてアプリなどで記録するなど、飲酒量を把握し減らすよう啓発しましょう。紙のカレンダーと三色シール(赤・黄・青)を使う方法もあります。「飲まなかった日(青)」、「飲みかけた日(黄)」、「飲んだ日(赤)」で色を変えて、カレンダーにシールを貼っていくと、自身の飲酒パターンが把握できます。

・喫煙者はコロナウイルスの感染・重症化リスクが高い可能性が指摘されています(WHO)。喫煙本数を減らすこと、禁煙することの必要性を強く伝え、3密対策として喫煙室の使用制限などについても検討しましょう。

生活リズムの変化が予想されます優先

・在宅勤務にともない自分のペースで仕事を遂行できるようになるため、起床時間や就寝時間が遅くなるなど、生活リズムの変化が懸念されます。一方で、通勤の必要がなくなることで余暇時間が増加し、睡眠不足が解消されたり、日頃できなかった取り組み(運動・趣味など)を試みたりと、良い効果も期待できます。

対策

・起床・就寝時間、食事時間を定め、規則的な生活リズムを作るよう啓発しましょう。

・朝と夕方など、決まった時刻のオンラインミーティングの実施や、生活記録表の導入も効果的です。

・日常生活でも3密防止の厳守を啓発しましょう。

仕事

コミュニケーションが取りにくいことによる生産性低下が懸念されます優先労働者の声

・遠隔ツールを利用してのコミュニケーションでは、アポイントメントを要するなど、双方の意思疎通を意図的に行わなければならなりません。正確な情報共有に時間を要したり、軽微な内容の相談を行いづらかったり、業務効率の低下が懸念されます。

対策

・個々の業務内容や分担を明確にしましょう。

・始業時や終業時など、定期的な小ミーティングで個人の問題点を抽出・共有しましょう。

・チャット機能などを利用して、口頭・文章の両方での意思疎通を推奨しましょう。

労働時間の変化や休憩時間の不足が考えられます優先労働者の声

・テレワークの導入で業務効率化がはかられたり、周囲を気にせず終業できる労働環境にあることなど、労働時間の短縮が期待できます。一方で、労働と私生活の切り替えが難しく、業務管理が個人にゆだねられる割合が大きくなり易いため、潜在的な時間外労働が発生する恐れがあります。さらに労務管理ツールなどの導入により、個人の離席が厳密に記録されてしまうことで、適切な休憩時間の減少や精神的ストレスの負荷が懸念されます。

対策

・客観的な労働管理を実施しましょう(始業・終業時の報告や、労働管理ツールの導入などがあります)。

・育児・介護などの私用のために所定労働時間を柔軟に変更できるよう、フレックス制度やみなし労働時間制などの制度の導入を検討しましょう。

・短時間の離席は容認しましょう(通常業務でも適度な休息は必要です。トイレや給水など、短時間の離席は容認しましょう)。

・客観的な労働管理を実施しましょう(始業・終業時の報告や、労働管理ツールの導入などがあります)。

新しいシステム導入による変化へのストレスが懸念されます優先労働者の声

・遠隔ツールなどの新しいシステム導入により、業務方法や就業環境が変化することで、これに適応するためのストレスが発生します。また、IT機器の操作に不慣れな人には、特に強い精神的負荷が懸念されます。

対策

・操作方法の簡易なマニュアルを作成しましょう(添付の説明書を配布するなど)。

・始業時や終業時など、定期的な小ミーティングで個人の問題点を抽出・共有しましょう。

・業務内容や目標を明確にし、細分化を行いましょう。

・システム導入の際には、操作が簡便なものを選択しましょう。

・定期的に心身の健康状態チェックを行いましょう。

上司による業務管理やマネジメントの低下が懸念されます労働者の声

・上司が部下の状況を直接的に把握できないため、労務管理や健康管理が困難になることが考えられます。

・特に個人の変化を把握しづらくなり、意欲の低下や体調不良などへの気づきが遅れることが懸念されます。

対策

・情報共有や客観的な労務管理のためのツールの導入を検討しましょう (スケジュール管理ツールやプレゼンス管理ツールなどがあります)。

・定期的に心身の健康状態チェックを行いましょう
(疲労蓄積チェックリストを応用して、情報機器作業の身体影響を踏まえたチェックリストを作成することも有効と考えます。「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」(厚生労働省)、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(厚生労働省)を参照)

・体調不良の際に、気軽に相談できる窓口を案内しましょう。また、今まで以上に体調確認や声掛けを行いましょう。普段よりも多く1on1ミーティングを実施することで、意欲の維持や体調管理を行うようにした企業もあります。

セキュリティ上の情報漏洩リスクが懸念されます優先

・新規システムの導入に伴い、外部ネットワーク接続によるセキュリティ上のリスクや、情報機器端末の紛失・盗難による情報漏洩リスクが懸念されます。

対策

・クラウドサービスなどを利用して情報機器端末にデータを保持しない、シンクライアント型のテレワーク方法が最も安全です。(「テレワークセキュリティガイドライン」(総務省)を参照)

・外部ネットワークを利用する新規システムを導入する際は、社内クローズドネットワークと直結させず、専用端末を用意するなどの対策が有用です。

・Eメールなどでファイルを転送する際には、必ずパスワードを設定するよう周知徹底ください。

通信環境の悪化による生産性低下が懸念されます優先

・遠隔ツールを利用してのコミュニケーションでは、アポイントメントを要するなど、双方の意思疎通を意図的に行わなければならなりません。正確な情報共有に時間を要したり、軽微な内容の相談を行いづらかったり、業務効率の低下が懸念されます。

対策

・各労働者のインターネット環境を把握し、支援しましょう。

(モバイルルーターや通信契約PCの配給が考えられます。「テレワークに関する助成、補助」(日本テレワーク協会)を参照)

・インターネット以外の通信方法について対応を検討しましょう(特に電話や書簡などについて、データ化やインターネット通信への移行を検討する必要が考えられます)。

健康問題による労働生産性の低下(プレゼンティーイズム)が懸念されます

・前述のとおり、テレワークでは、長時間の不良姿勢や座位による眼精疲労や肩こり・腰痛などの身体的のほか、労働管理やコミュニケーションへの不安、労働と私生活の切り替えの難しさなどによる精神的負担が考えられます。また、”stay home”による身体活動の低下は、睡眠障害やストレスの蓄積など、健康への更なる影響が心配されます。
これら心身の健康状態の悪化は集中力を低下させ、生産性の低下につながります。

対策

・物理的な作業環境整備のための支援を行いましょう

(前述” オフィス環境チェックリスト”、作業机・イスの配布などが考えられます。「自宅などでテレワークを行う際の作業環境整備イメージ」(厚生労働省)を参照)。

・安心して就労に従事できる環境を確保しましょう

(業務体制や勤怠把握ルールなどの明確化、長時間労働予防対策、個人のプライバシーへの配慮などが考えられます。「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」(厚生労働省)、「テレワーク総合ポータルサイト」(厚生労働省)を参照)

・定期的に業務の進捗やスケジュールを共有できるツールの導入を検討しましょう。

・相談窓口の設置と周知を行いましょう

(社内窓口だけでなく、外部機関も有効に利用しましょう。「こころの耳」(厚生労働省)、「SNS心の相談」(厚生労働省)を参照)

仕事の進め方が変化することで、業務効率化が期待できます

・テレワークへの大規模な移行に伴い、書類のペーパレス化や会議の縮小など、業務の遂行に必要なタスクの優先順位が明確化され、業務の効率化が期待できます。

対策

・業務の効率化を個人に求めるのではなく、部署全体でチームとして検討を行いましょう。

・各部署での業務効率化の良好事例を収集し、他部署に水平展開していくことが大切です。

会議時間の変化が考えられます

・遠隔ツールを用いた会議では、開催の手間が少なく、タイマー設定などによる時間管理も容易なことから、1回の会議時間の短縮が期待できます。一方で、参加者が操作に不慣れであったり、議題が複雑であった際などは、会議時間が長くなる恐れがあります。

対策

・議題を明確にし、可能な限り簡易化しましょう。

・会議の規模に応じた会議時間をルール化しましょう。参加者にタイマー役を設定したり、上司が率先して閉会を促すことも有効です。

家族・地域

家族との関係性の変化が予想されます優先労働者の声

・自宅で過ごす時間が増えるため、家族と過ごす時間が増え、関係性が変化することが予想されます。良好なコミュニケーションが増加し、家族の絆が深まることもあれば、先の見えない不安や外出できないストレスにより、家庭内暴力の増加や離婚につながることも懸念されます。

対策

・自らのストレスを上手に解消するよう啓発しましょう。生活習慣を整える、メディアでとりあげられている情報にふりまわされすぎない、自分の気持ちが明るくなるようなストレス解消法を見つけることなどが有用です。

・家庭内で問題が起きた場合は、1人で悩まず、信頼できる相手のほか、配偶者暴力相談支援センターや児童相談所虐待対応ダイヤルなど、相談窓口で相談することが大切です。内閣府男女共同参画局では、2020年4月29日より24時間体制で電話、メール、チャットで相談できる「DV相談+」を運営しています。

疾病・医療

受診のしやすさの変化・疾病コントロールへの変化が予想されます優先労働者の声

・自分のペースで仕事ができるようになり、テレワーク導入前は困難であった日中の通院がしやすくなり、疾病コントロールがしやすくなることが予想されます。一方で、会社近くの病院に通院していた人は通院しづらくなり、通院及び服薬の自己中断につながり、疾病コントロールがうまくいかなくなる可能性も懸念されます。

対策

・通院及び服薬の自己中断にならないように、受診継続の啓蒙や、電話やインターネットを使って遠隔で受診できるオンライン診療の周知を行いましょう。(「オンライン診療を導入した全国の医療機関」(厚生労働省)を参照)

感染リスクの低下・感染に対する不安感の軽減が予想されます優先

・人との接触が減ることにより、感染リスクの低下・感染に対する不安感の軽減が期待できます。