健康経営・統括マネジメント研究会

健康経営・統括マネジメント研究会は、2025年5月に発足した日本産業衛生学会所属の研究会です。

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本研究会の情報は、このホームページで適宜、アップデートして参ります。

研究会の開催案内等を定期的にメールで送付しております。ご希望の場合は、産業医科大学産業生態科学研究所 産業保健経営学までメールでご連絡ください。

今後の研究会の開催予定

2026年5月30日(土曜)に、第99回日本産業衛生学会学術集会(大阪)内で自由集会(第3回健康経営・統括マネジメント研究会)を開催します。

現地参加のみです

2026年10月3日(土曜)に、東京にて第4回健康経営・統括マネジメント研究会を開催します。

詳細は決まり次第、情報をアップいたします

健康経営・統括マネジメント研究会について

本研究会で目指すしていることを、2025年11月27日に開催しました自由集会で代表世話人の永田智久がプレゼンしております是非、ご視聴ください。(43分の動画です)

配布資料はこちら

第2回 健康経営・統括マネジメント研究会 報告

日時:2026年2月21日(土) 13:00~17:30

会場:TKP品川港南口会議室ホール4A(東京都 港区港南2-4-3)、および、ライブ配信(zoom)

代表世話人:永田智久(産業医科大学)

<一般演題>

座長:森 貴大(産業医科大学)

1.健康保険組合の医療者による生活習慣病関連疾患における超ハイリスクアプローチの効果

〇佐藤 文彦 1), 2), 眞野 満知子 1), 舟久保 恵美 1)

1) 内田洋行健康保険組合, 2) Basical Health株式会社 

【目的】内田洋行健康保険組合(加入者約6,800名、以下「当健保」)では、事業所には常勤医療職はおらず、当健保の常勤保健師2名で生活習慣病重症化予防を行っている。保健師のみでは医学的に治療介入の判断が困難なケースや、通院していても数値が経年的に高いケース、面談や受診勧奨に応じないケースを認めることから、2021年12月より当健保が糖尿病専門医と顧問医契約し、超ハイリスク該当者減少を目的に超ハイリスク者への積極介入を始めた。  【方法】当健保では、生活習慣病の重症化予防として2014年より各疾患にてリスク分類を行い、各年度の健診結果から高危険レベル該当者を抽出し、受診勧奨を積極的に実施。さらに2021年からは糖尿病専門医の医学的指導の下、保健師が従業員本人へのヒアリングを行うと同時に、自宅や職場の近隣にある糖尿病専門医や循環器・腎臓・内分泌専門医クリニック等を検索し、個別に具体的な受診先の助言も含めた保健指導・受診勧奨を開始した。この効果検証として、2018年度から2023年度健診受診者における血糖のリスク者割合の推移を調査した。 【結果】2018年度健診受診者総数は4379人、2023年度健診受診者は4735人であった。高血糖のリスク者について、高危険レベル該当者は2018年度 55人から2023年度38人となり30.9%減少した。高危険レベル該当者割合は2018年度1.26%、2023年度0.80%であった。 【考察】高危険レベル該当者それぞれの服薬や受診管理状況などについて、保健師が糖尿病専門医から医学的根拠に基づいた医学的アドバイスを、個々の事例それぞれに対して得ることが可能となった。医学的根拠に基づいた具体的なアドバイスが可能となったことは、高危険レベル該当者である従業員にとっても安心感があり、専門医への受診行動や治療への意識向上の動機づけになり、結果的に複数の生活習慣病関連疾患において、高危険レベル該当者数が著明に減少を認めた。健康保険組合において、医師・保健師による最新の医学的根拠に基づいた積極的介入は、超ハイリスク該当者を減少させるうえで、非常に有益であることが示唆された。

2.企業価値向上につながる健康経営に向けて~健康経営戦略マップ・ KGIを例に~

〇国分 茂行 1), 香川拓也 1), 牟田口絵里 1), 最上裕子 1)

1) 株式会社レゾナック 人事労務部健康経営推進グループ

【目的】 株式会社レゾナックの健康経営戦略マップおよびKGI(Key Goal Indicator)を事例に、健康経営と経営戦略や人事戦略などのつながりを紐解き、企業価値の向上につながる健康経営について考察する。 【内容】 健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することで、企業価値や業績の向上が期待される経営戦略の一つである。また自社の健康経営について、健康課題→健康投資⇔健康風土の醸成→健康投資の効果→健康経営の目標の達成→経営方針の実現という、一連のストーリーを可視化したものが、健康経営戦略マップである。 レゾナックでは、パーパス・バリューや経営戦略、人的資本経営等の方針に基づき、2025年10月、健康経営戦略マップをリニューアルした。また併せて、「①健やかな健康風土の醸成」「②従業員のヘルスリテラシーの向上」「③プレセンティーズムの低減」の3つを、健康経営におけるKGIとして新たに設定し、①は知覚された組織的支援尺度(SPOS)をベースとした独自設問3問、②は伝統的批判的ヘルスリテラシー尺度(CCHL)日本後版5問、③はSPQ(東大1項目版)1問で、それぞれ測定している。 KGIの策定にあたっては、一貫性のあるストーリーとなるよう、既存の人事施策との連動を特に意識し、このうち健やかな健康風土の醸成は、「職場の心理的安全性」と連動している。幅広い技術の「すり合わせ」によって製品を生み出し、市場に付加価値を提供するレゾナックにおいて、安心して物が言えない環境は致命的な状況であり、職場の心理的安全性は、付加価値を生み出し、企業価値の向上に必要な極めて重要な位置づけにある。 それを踏まえると、POS(知覚された組織的支援:自分の健康を「会社や上司が大事にしてくれている」と感じられるか)は、心理的安全性と密接に関連する概念と言え、従業員向けのセミナーや全社ウォーキングイベント、経営トップによるメッセージの発信などの一つ一つが、単なる施策ではなく、POSの向上を通じて健やかな健康風土を醸成し、職場の心理的安全性の向上に寄与する取り組みであると言える。 【評価】 健康経営のKGIを、経営戦略や人事戦略、人事施策に至る一連のストーリーに基づいて策定したことにより、経営方針とのつながりを明確にできた。そして、これらを踏まえ、健康経営戦略マップをリニューアルしたことで、健康経営の各施策が、経営方針の実現にどう寄与するのか可視化できた。 【考察】 健康経営戦略マップやKGIは、一度作成したら終わりではなく、定期的な見直しが不可欠と考える。今後はKGIやKPIとの相関や経営方針と健康経営との整合性の検証、そしてレゾナックの会社方針や組織文化をより深く理解し、健康経営戦略マップやKGIを更なるブラッシュアップにつなげたい。

<基調講演>

座長:森 晃爾(産業医科大学)

「産業保健は企業経営に貢献できているのか」

演者:河野 慶三(河野慶三産業医事務所)

本講演は「産業保健は企業に貢献できているか」という根源的な問いを軸に、評価基準(エンドポイント)の設定、経営理念との整合、法的根拠としての安全配慮義務、そして説明責任(アカウンタビリティ)を通じて産業保健の社会的価値を確立する論旨で構成された。

1. 貢献度評価の枠組みと経営理念

産業保健の貢献度は経営者の価値観に左右される。エビデンスに基づく評価を行うには、何を成果とするかという「エンドポイント」を事前に定義し、経営層と合意(すり合わせ)することが不可欠である。売上等の財務指標を直接のエンドポイントに設定することは、産業保健の本質からして不利であり、むしろ「健康は資源である」という理念のもと、その維持・増進のプロセスを可視化する方針設計が肝要となる。 自身が全社産業医を務めた富士ゼロックスの事例では、1996年に「健康は資源」と定義し、「自律と支援」を原則とする基本方針を経営会議で決定した。この方針により、産業保健活動が人事施策やサステナビリティ報告と連動し、構造的な企業貢献として位置づけられた。

2. 統括産業医の役割と実践

「産業保健の統括マネジメント研究会」が産業医学ジャーナルに投稿した10社の事例からは、統括産業医の共通機能が「活動基盤の整備」「PDCAとガバナンス」「スタッフの支援・育成」「経営層との対話」に整理された。 産業保健が企業へ構造的に貢献した成功例として、富士ゼロックスでの取り組みが詳述された。その中核は、単なる健康管理に留まらず、経営・人事・事業基盤と深く連動した点にある。1996年、経営会議決定により「社員の健康に関する基本的な考え」を策定。健康を単なる「状態」ではなく、企業の持続可能性を支える「資源」と定義した。「健康は本人が守り、会社は支援する」という自律と支援の原則を明記し、産業保健を人事方針やグローバルなサステナビリティ報告と合流させた。この「方針策定」自体が、産業保健担当者による企業への最大の構造的貢献と位置づけられた。また、事業を支える「トナー」の健康影響を10年間の前向きコホートで調査し,現行の曝露レベルでは非曝露群との間に有意な差はないことを明らかにした.これは、グローバル展開する基幹事業に対する企業の説明責任(アカウンタビリティ)を果たす上で必須のデータとなり、事業継続リスクの評価に直接寄与した。また、社員への支援である全社員個別面談では,健康診断の有所見率の改善を直接の目的とせず、社員の健康リテラシー向上と相談の閾値を下げることを目指し、約1万5000人に対する全社員面談を継続的に実施した。誕生月健診への移行によりスタッフの稼働を計画化し、面談を通じて仕事の状況も把握することで、現場の課題を人事へフィードバックするループを確立し

3. 機能不全の教訓と法的根拠

産業保健が機能不全に陥った象徴的事例として、産業医も被告となった訴訟が分析された。方針の不在やスタッフ間の関係性破綻、人事のガバナンス欠如が、ハラスメント訴訟と組織の停滞を招いた。 産業保健の目的は「働く人の保持・増進」であるが、実務上の核は労働契約法に基づく「安全配慮義務」にある。管理監督者が部下の健康状態を把握し、適切に措置するプロセスを支援することが、企業の社会的セキュリティ(アカウンタビリティ)の根拠となる。

4. 今後の展望

安全配慮義務の範囲は、疾病予防からメンタルヘルス、プレゼンティーズム対策へと拡大しているように思われる。健康経営が注目される中、経営指標への貢献を目指すのではなく、経営者と合意した説明責任を果たせているかどうかが、産業保健の真の価値を決める。経営理念に基づいた活動を推進し、それが外部に説明可能であるとき、産業保健は十分に「企業経営に貢献できている」と評価されるべきである。

<パネルディスカッション>

「産業保健は企業経営に貢献できているのか~実践と課題について~」

企業における健康管理は、労働安全衛生法上、事業者にその実施が義務付けられている。産業保健が法令で定められた最低基準を守るのみではなく、快適な職場環境を実現し、企業経営への貢献を目指すためには、経営者が産業保健に期待することと産業保健の目的との調整が欠かせない。本パネルディスカッションでは、産業保健が企業経営に貢献することの定義と可能性、および、課題について多職種で議論した。

座長:永田智久(産業医科大学)、倉重公太朗(KKM法律事務所)

パネリストの発表は以下の通りであった。

•山下 奈々 氏(株式会社リコー): 企業経営への貢献における課題として、健康経営度調査の目的や活用の不明確さ、経営層へのアプローチの難しさを指摘した。また、表面的な健康問題の背後にある働き方等の根本課題に対し、関係部門と連携してアプローチする必要性を述べた。

•遠藤 知美 氏(キヤノン株式会社): 創業者が医師である同社の「企業の成長は社員の健康と幸せな家庭生活の上にしか成り立たない」という理念を紹介した。従業員の納得感の醸成や、経営への貢献度の見える化を今後の課題として挙げた。

•野間 幹子 氏(国分グループ本社): 従業員の主観的幸福感向上を目的とした取り組みと、その測定結果を報告した。健康経営優良法人の認定取得が安心・安全の実感向上に寄与したこと、また、精神的サポートの充実が幸福感向上に直結することを示した。

•伊東 明雅 氏(株式会社朝日新聞社): 報道機関における産業保健活動について報告した。健康経営の推進には、法令遵守や安全衛生委員会、職場巡視といった「土台」が不可欠であると強調し、禁煙ポリシー策定による喫煙率低下の成功事例を紹介した。

•倉重 公太朗 氏(KKM法律事務所): 法律家の視点から、健康経営が形式化することのリスク(やらされ感の蔓延や安全配慮義務違反に問われる可能性)に警鐘を鳴らした。健康経営の真の目的は生産性向上ではなく「会社と従業員の信頼関係の構築」であると論じた。

•小田上 公法 氏(産業医科大学): 企業経営(持続的な企業価値創造)と健康経営の関係性を整理した 。知覚された組織的支援(POS)の重要性を解説し、投資対効果は必ずしも貨幣換算である必要はなく、経営者の倫理観が取り組みの根幹であると指摘した。

全体討議・質疑応答:パネリストの報告を踏まえ、フロアの参加者を交えて活発な討論が行われた。主な論点は以下の通りである。

•経営層へのアプローチと効果測定:経営層へ産業保健の価値を伝える難しさが共通課題として挙げられた。投資対効果を貨幣価値のみで示すことの限界が指摘され、POSや従業員エンゲージメントといった定性データや従業員実感に基づく指標を複合的に活用し、経営層と対話することの重要性が確認された。

•健康経営優良法人認定の功罪:外部評価の取得が社内の意識向上や安心感に寄与する一面がある一方、目的と手段が逆転し形式的な対応(順位や偏差値への一喜一憂)に終始するリスクについても活発な議論が交わされた。 •経営者の倫理観と組織風土:経営者の本質的なマインドセットを変容させることは容易ではないが、機会を逃さずエビデンスを示しながら地道に啓発や種まきを続ける必要性が議論された。

•働き方の変化(ジョブ型雇用等)への対応:ジョブ型雇用への移行において会社と従業員の関係性が希薄化する懸念に対し、むしろ組織の公平性・公正性を担保し、パフォーマンス発揮のための手厚いサポートが重要になるとの認識で一致した。

結論と今後の展望

本研究集会を通じ、産業保健は企業経営に貢献できるという強い共通認識が確認された。そのためには、安全配慮義務を土台とした実質的な信頼関係の構築が求められる。また、従業員の実感(POS等)を重視した指標の活用や、人事施策や経営戦略と連動した統合的なアプローチの不可欠性が共有された。 健康経営において最も重要なのは、形だけの制度導入ではなく、組織の中にいる従業員自身がその効果を実感できることであると述べられた。また、従業員の実感や組織風土の向上が、結果として人的資本経営や企業経営に直結しプラスに作用するという本日の議論の総括がなされた。

世話人

代表世話人 永田 智久(産業医科大学)

世話人 伊東 明雅(株式会社朝日新聞社)

世話人 遠藤 知美(キヤノン株式会社)

世話人 倉重 公太朗(KKM法律事務所)

世話人 津野 陽子(埼玉県立大学)

世話人 山下 奈々(株式会社リコー)

世話人・事務局 小田上 公法(産業医科大学)

世話人・事務局 森 貴大(産業医科大学)

顧問 森 晃爾(産業医科大学)

健康経営・統括マネジメント研究会 会則
2025年1月13日

総則

第1条 本会は、健康経営・統括マネジメント研究会(以下、研究会)と称し、日本産業衛生学会(以下、学会)の「定款第48条第5項」および「研究会に関する規程」に則って設置する。

2.研究会の円滑な運営のために本会則を定める。

目的および事業

第2条 本会は、労働者の健康と企業の発展の両立に貢献する産業保健活動のあり方について明らかにするとともに、産業保健専門職がそのための実践的な活動ができるよう、以下の事業を行う。

(1) 研究集会の開催

(2) 国内外の調査研究および学術交流

(3) 研修会等の開催及び教育資料等の発行

(4) その他、本研究会の目的達成に必要な事業

2.研究集会は、年1回以上開催することとし、そのうち1回の開催中に総会を行う。

会員および会費

第3条 研究会の会員は、学会の会員および本研究会の目的に賛同し研究会活動に参加を希望する個人とする。

2.本研究会の会員登録方法および退会については、別に定める研究会細則による。

3.会費については、別に定める研究会細則による。

世話人および代表世話人

第4条 世話人および世話人会について、以下の通り定める。

(1) 会員の中から世話人5名以上をおく。

(2) 世話人の選出は、別に定める研究会規則により行う。

(3) 世話人の任期は3年とし、再任を妨げない。

(4) 世話人会は、代表世話人の召集または世話人の要請により、年1回以上開催され、研究会の活動および運営について決定する。

第5条 代表世話人について、以下のとおり定める。

(1) 世話人の互選により代表世話人を選出する。

(2) 代表世話人の任期は一期3年とし、再任を妨げない。

(3) 代表世話人は、世話人会の承認を得て、副代表世話人を指名することができる。

顧問

第6条 研究会への助言等のために顧問をおくことができる。

2.顧問は、世話人経験者およびその他の有識者から本人の同意を得て世話人会が指名する。

会計

第7条 研究会の会計は、学会よりの助成金、研究会事業収入、その他をもって充当する。

2.研究会の会計年度は、学会と同じく毎年3月1日から翌年2月末日までとする。

学会理事長への報告

第8条 代表世話人は、世話人会の議を経て、以下の事項を学会理事長に報告する。

(1) 活動報告および収支決算

(2) 代表世話人および世話人氏名

(3) その他、世話人会で必要と認めた事項。

2.学会理事長に対する本研究会の継続申請は、世話人会の議を経て代表世話人が行う。

事務局

第9条 本研究会の事務局は、代表世話人のもとにおく。

附則

1. 本規則の変更は、世話人会および会務総会での承認を経て、学会理事会の承認を得るものとする。

2. 本規則は、2025年1月13日より施行する。

健康経営・統括マネジメント研究会 細則

第1条 会員登録及び退会

1. 会員になろうとする者は、氏名、所属機関、連絡先等の必要事項を明記して研究会事務局に申し込まなければならない。

2. 研究会を退会しようとするものは、事務局に申し出なければならない。

第2条 会費

1. 会費は、無料とする。

第3条 世話人の選出

1. 世話人は、本研究会の会員の中から世話人会が推薦し、総会で承認する。

2. 上記の規定にかかわらず、本研究会発足時の世話人は、附則に定める通りとする。

附則

1. 本細則の変更は、世話人会の議を経て、総会で承認するものとする。

2. 本研究会発足時の世話人は、別表の通りとする。

3. 本細則は、2025年3月11日より施行する。