知覚された組織的支援(SPOS-J)

Perceived Organizational Support(知覚された組織的支援)とは

Perceived Organizational Support(POS)は、1986年にEisenbergerらによって提唱された概念であり、「組織が自分たちの貢献を評価し、自分たちのウェルビーイングに配慮してくれているという、従業員の全体的な信念」と定義されています 。POSの主な特徴は、経営者や人事部門の視点からではなく、そこで働く従業員が会社に対してどのように感じているかという「従業員の視点」に焦点を当てている点にあります 。

POSは、有形・無形の報酬の交換を通じて人間関係が形成されるという「社会的交換理論」に基づいています 。従業員が組織からの支援を感じるほど、組織に対して好意的な感情を抱き、組織の目標達成に貢献するために努力するという考え方が基盤となっています 。先行研究において、POSは従業員の職務満足度やワーク・エンゲイジメントと正の相関があり 、離職意図などの否定的な要素とは負の相関があることが示されています 。

SPOS-J(日本語版SPOS)の開発プロセスとその信頼性・妥当性

POSを測定する指標としてSurvey of Perceived Organizational Support(SPOS)が国際的に使用されてきましたが、これまで信頼性と妥当性が検証された日本語版が存在していませんでした 。そこで、日本の労働者に適用可能な日本語版SPOS(SPOS-J)を開発しました 。

1) SPOS-Jの開発プロセス
ISPOR(International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research)のガイドラインに従い、順翻訳、逆翻訳、原著者による確認、および日本の労働者へのヒアリングを経て日本語版を作成しました 。その後、日本の労働者6,220名を対象としたWeb調査と、2週間後に452名を対象とした追跡調査を実施し、統計学的な検証を行いました 。

2) 信頼性
SPOS-Jは、ポジティブな側面を尋ねるSPA(Sufficiency of Positive Aspects)と、ネガティブな側面を尋ねるMNA(Minimality of Negative Aspects)の2つの因子で構成されます 。内的一貫性を示すCronbachのα係数は、SPAで0.92、MNAで0.84でした 。また、2週間後の再テスト信頼性を示す級内相関係数(ICC)は、SPAで0.72、MNAで0.55であり、十分な信頼性が確認されました 。

3) 妥当性(因子的妥当性および構成概念妥当性)
項目応答理論分析を用いて、元の36項目から各因子4項目、計8項目を選択しました 。確認的因子分析の結果、この2因子8項目モデルは許容可能な適合度を示しました 。また、他の指標との相関を確認した結果、SPOS-J(特にSPA)は、上司のサポート、組織的公正、職務満足度、ワーク・エンゲイジメント、組織コミットメントと正の相関を示し、役割葛藤や離職意思とは負の相関を示しました 。

得点方法

SPOS-Jは、8つの項目に対して「0=全くそう思わない」から「6=非常にそう思う」までの7件法で回答します 。1〜4番の項目(SPA)はそのまま得点化し、5〜8番の項目(MNA)はネガティブな内容であるため、得点を逆転させて(0点は6点、1点は5点…6点は0点として)計算します 。8つの得点の合計点を8で割った平均点を算出し、得点が高いほど知覚された組織的支援(POS)が高いことを示します 。

実務での活用において回答者の負担を軽減したい場合は、十分な信頼性と妥当性が確認されているポジティブ項目のみの4項目(1〜4番)を短縮版として使用する(この場合は4項目の合計点を4で割った得点を算出)ことも可能です 。また、得点の意味のある最小変化量(MCID)は0.6点と算出されており、施策の前後等で0.6点以上の変化があれば、実質的な意味を持つ変化と解釈できます 。

テスト所要時間

8項目で1~2分程度で実施可能です。

使用条件

【1】学術研究・非商用目的でのご利用の場合
学術論文、学会発表、学位論文の執筆、または自組織内での非営利な健康管理・調査といった非商用目的でご利用いただく場合は、事前の利用申請や許諾手続きは不要です。ただし、ご利用にあたっては、以下の事項をお守りくださいますようお願いいたします。

  • 引用の表記: 論文や報告書等で公表される際には、出典として以下のいずれかを明記してください。
    ➢日本語: 「本尺度は、産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学が開発した『日本語版「知覚された組織的支援尺度」(SPOS-J)』を使用しています。」
    ➢英語: “This scale utilizes the Japanese version of the Survey of Perceived Organizational Support (SPOS-J), developed by the Dept. of Occupational Health Practice and Management, Institute of Industrial Ecological Sciences, University of Occupational and Environmental Health, Japan.”
  • 尺度の非改変: 尺度の信頼性を維持するため、質問項目(導入文を含む)や尺度の構成を変更、追加、削除するなどの改変は行わないでください。
  • 免責事項: 本尺度の利用により生じたいかなる損害についても、当研究室は一切の責任を負いかねますことをご了承ください。

【2】商用目的でのご利用の場合
本尺度を用いて直接的・間接的に対価を得る活動(例:コンサルティングや研修サービスでの利用、有料のシステムやアプリケーションへの組み込み、調査結果の販売など)は、商用利用に該当します。商用利用をご希望の場合は、お手数ですが以下の手順に沿って申請をお願いいたします。

〈日本語版SPOS(SPOS-J)商用利用の申請手順〉

  1. 利用希望のご連絡: まずは、当研究室の代表メールアドレス(j-skeiei (アットマーク)mbox.med.uoeh-u.ac.jp)宛に、商用利用を希望される旨をご一報ください。
  2. 申請フォームへの入力: 下記の申請フォームに、具体的な活用計画など必要事項をご入力いただきます。
    ※ご入力後は再度、当研究室の代表メールアドレス宛にご一報いただけますと幸いです。
    【SPOS-J使用申請用フォーム】https://forms.gle/5BZVzwYadrTh5ddw5
  3. 研究室内での検討: ご申請内容に基づき、研究室内で利用の可否を検討させていただきます。
  4. 利用開始後の遵守事項: 利用許諾後、以下の事項をお守りください。
    • 引用の表記: 上記【1】と同様の引用表記をお願いいたします。
    • 尺度の非改変: 上記【1】と同様、尺度の改変は行わないでください。
    • 免責事項: 本尺度の利用により生じたいかなる損害についても、当研究室は責任を負いかねます。

尺度の限界

本尺度の妥当性検証はインターネット調査会社の登録者を対象としているため、インターネット環境を持たない労働者の実態が反映されていない可能性があります 。また、本尺度は自己申告による主観的な評価に基づくデータであり、今後は実際の離職行動や業務パフォーマンスといった客観的な指標を用いた検証が必要です 。

引用情報

  1. Odagami K, Nagata T, Eguchi H, Inoue A, Mafune K, Mori K. Reliability and validity of the Japanese version of the Survey of Perceived Organizational Support. J Occup Health 2024; 66(1): uiae034.
  2. Eisenberger R, Huntington R, Hutchison S, Sowa D. Perceived organizational support. J Appl Psychol 1986; 71(3): 500-507.

お問い合わせ

産業医科大学 産業生態科学研究所
産業保健経営学研究室
E-mail: j-skeiei(アットマーク)mbox.med.uoeh-u.ac.jp

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